うまい子との比較で分かる 内野ゴロ捕球のコツ(正面・左ゴロ編)
中学の軟式野球クラブチームの練習を眺めています。
内野ゴロのノック練習を見ていると、1年生で入団してすぐの時期からうまいな〜と思う子がいます。
特に正面近くのイージーなゴロのさばきが全然違います(逆に言えば、遠くて速いゴロは、うまい子でもそうそう取れません)
イージーなので、みんなそれなりには取れます。しかし、ちょっとイレギュラーしたり、ハーフバウンドぎみになったりしたときの確実性に大きな差があるのです。
うまい子たちは、小学校の頃から基礎を教えてもらい、家でも基礎練習をがんばってきたのだろうなと思います。動きににじみ出ています。
そこで今回は、ゴロ捕球がうまい子/うまくない子の比較から、どうやったらうまい子たちに少しでも近づけるのかを考えてみます。
見て、学んで、マネることで近づいていきます。
1. 内野ゴロ捕球 うまい子/うまくない子の比較
まずは比較表です。項目ごとに自分がどちらに当てはまるか、考えながら見てみましょう。
※右投げ野手の場合です
※正面から左側エリアのゴロについての分析です
うまい子の特徴 | うまくない子の特徴 | |
---|---|---|
スタート後の動き | 半身になって、じっとバウンドを見ていることがある | 必ずすぐに移動しはじめる |
目の高さ・姿勢 | 上下の動きが少ない 移動から捕球、送球までずっと低いまま |
上下の動きが多い 移動は高く、捕球で低くなり、送球でまた高くなる |
グラブの高さ | 上下の動きが少ない 早めにグラブを下ろしている |
上下の動きが多い グラブを振ったり抱えたりよく動かしている |
グラブを出すタイミング | 早い または始めから出している |
遅い 取る直前に出す |
出したグラブの向き | 正面 グラブが立っている |
上向き グラブがねている |
捕球時のグラブの位置 | うでを伸ばして、体の前のほう | 体の近く |
捕球の瞬間でのグラブの動かし方 | 動きが少ない、または前に出して取る | 体に引きつけながら取る |
捕球時の体の移動スピード | ゆっくり 捕球手前でスピードが落ちる |
速い 移動時のままスピードが落ちない |
捕球姿勢で左足を出す向き | いろんなパターンがある。後ろに引いて半身の姿勢になることが多い | 左前に踏み出す1パターン |
両手か片手か | 打球によって両手、片手の使い分けがある | なるべく両手でとることを目指す |
ボールの握り替え | 体の前のほうで握り替える | 体に引きつけながら近くで握り替える |
うまい子でまず印象的なのは、スタート直後の動きです。スプリットステップなどでスタートを切りますが、そのあとでじっと落ち着いてバウンドを見ていたりします。このとき、左足を引いて半身(はんみ)の姿勢をとっている子が多いです。うまい子たちがボールを見る時の基本姿勢のようです。
うまい子は、目やグラブの高さがずっと低いままです。下半身がつらいはずなのですが、あたりまえにがんばっているのです。
うまい子は、グラブを出すのが早いです。出すスピードが速いのではなく、かなり早いタイミングから出しています。始めから出したままの子もいます。ボールがくるタイミングで出すのではないのです。
うまい子は、体の前のほうで握り替えをしています。体に引きつけません。また、グラブの面にゴロを当てた次の瞬間に右手にボールを握っている、いわゆる「当て取り」ができる子もいます。このときはもう、取ったその位置で握り替えです。
そして声を大にして言いたいのは、うまい子には、捕球姿勢の2大パターンがある、ということです。1つは基本の「左足前」、もう1つは「左足後ろの半身」の姿勢です。これをほんとうに多用します。またこれはスタート後にボールを見る姿勢と同じであることにも気づきます。
2. 手と足に分けて考える
次に、どうやったらこれらのうまい子の動きを身につけられるかを考えます。
なんだか難しいなあということも、小さく分解して考えることで思ったより簡単に解決できるようになるものです。 そこで手と足にスキルを分けて考えていきましょう。手のスキルを身につけ、そして足のスキルを身につけていきます。
ちなみにスキルとは技術のことですが、頭で知っているだけではスキルがあるとは言えません。できるようになって初めてスキルと言えます。知識として知ったうえで、何度もやってみて体にしみこませる作業が必要です。
2.1 ゴロ捕球「手のスキル」
①グラブを立てる
グラブを立てる、と言いますが、実際にはグラブの中の「手のひら」を立てます。
素手のままで、足をひらいて捕球姿勢をとり、左手を捕球するポイントに伸ばして手のひらを正面に向けてみましょう。捕球ポイントは体の真下ではなく、少し前方になるようにします。そうすると手首が少しそることになりますね。これがグラブを立てるスキルです。
こんな感じで手首がそるのだな、と体で感じておきましょう。
②グラブは下げておく
グラブは早めに出して正面に向けて下げておきます。
ボールが来るタイミングにあわせて出そうとすると、速いゴロに遅れてさし込まれてしまいます。あらかじめ余裕をもって出しておくことが重要です。
③グラブは下から「前」へ
捕球時には、グラブを前へぐっと押し出すように動かします。
大事なことは、ボールが移動してくるラインに沿って動かすこと、体の前のほうでキャッチすることです。「取るポイントを前に作る」ことを意識しましょう。
④右手でフタをする(両手のとき)
両手キャッチのときは、ボールがグラブに入るタイミングにあわせて、右の手のひらでふわっとフタをします。
⑤握り替えは体の前のほうで
握り替えは、なるべく体の前のほうで行います。
キャッチ→握り変え→送球の一連の動作をつなげてやろうとして、グラブを体に引きつける動作を始めから入れてしまうと、キャッチできずにゴロがグラブの下を通過してしまったり、握り変えに失敗してボールをふわっと上に放り投げてしまうことがよく起こります。
体の前のほうでしっかりキャッチして、そこで握り替えることが、捕球の確実性と、取ってから投げるまでの早さを両立できる方法です。
⑥左右に割る
握り替えが終わったら、グラブとボールを左右に離します。これを「割る」といいます。
グラブとボールを左右に割りながら送球動作に入りますが、このとき両肘(ひじ)を左右に開くイメージで、左肘を目標に向けてグラブは顔の前に固定するようにすると、体の横回転が抑えられて送球のリリースが安定します。
2.2 ゴロ捕球「足のスキル」
①ゴロの右側から入る
転がってくるゴロのラインから少し右側にずれて入ります。「ライン外し」といいます。正面のゴロでもあえて少し右から見て、最後のバウンドにあわせて体を入れてグラブを挿し込むイメージを持ちます。
②捕球姿勢に入る前は歩幅を小さく
捕球姿勢に入る直前のステップは歩幅を小さくします。はじめは普通に走って移動していきますが、ゴロのラインへ近づいたら意識的に歩幅を小さくするのです。
捕球姿勢でスピードを落とすブレーキの役割と、右足を踏み込むタイミングを合わせやすくする役割があります。
③左足はかかとから入る
右足を踏み込んだ状態から、左足を踏み込みんで捕球姿勢をとりますが、このときかかとからそっと接地させて、少しずつ体重を左に乗せます。
歩幅を小さくしたり、右足でタイミングを合わようとしても、どうしてもイレギュラーなどでタイミングがずれることがあります。最後の最後でタイミングがずれても対応できるように、一度に体重を乗せてしまわずに、かかとから入ってタメを作るのです。
3. 家でできる基礎練習
3.1 手の練習
まずは手のスキルを身につけていきましょう。
素手の状態で両膝を床について立ち、手のひらを立てて下げて構えます(手のスキル①②)
正面からボールをコロコロ転がしてもらい、手のひらを前へぐっと押し出しながらキャッチします(手のスキル③)
このとき、手のひらの腹をボールのラインに向けていく意識をもちます
こういった基礎練習は、だいたい簡単なものが多いです。しかし、これを次にノック練習にもっていくと、たいていの子はできないです。スキルのことを忘れてしまって、いつもの自分のクセのままの動きをしてしまいます。
がんばって意識してスキルを実行できたとしても、ものすごい違和感があると思います。やりずらいし、エラーもいったん増えるでしょう。
でもその状態を通過して、頭で考えなくても自然にスキルを実行できるようになったときこそが、1つのスキルが本当に身についたということです。
やってみて、続けてみて、ノックでも、そして試合でも自然に実践できるところまで体にしみこませてください。
うまい子とうまくない子の大きな差は、まずこの手のスキルにあると思っています。うまくない子は、このスキルとは真逆のクセがついてしまっていることが多いです。中でも一番の悪いクセは、「×引いてとる」です。
バウンドがギリギリ合わなさそうな打球を、うまくない子は引いてとろうとします。うまい子は、がんばって少しでもグラブを前に出そうとします。
引いて取るクセがついてしまっていた子が、このスキルにチャレンジしてみたとき、いつもなら「やばい、取れなさそう」と感じていた打球が、自然とグラブに入ってくるような感覚を経験するはずです。
まずは手のスキル①②③だけでも身につけて、ノック練習で実践してみましょう。
3.2 手と足の練習
次に手とあわせて、足の運びを作っていきましょう。
説明したスキルが全て盛り込まれていますので、1つ1つ丁寧に確認しながら行いましょう。最初は違和感があると思いますが、違和感がなくなるまで続けてみましょう。
ボールを捕球位置の目印として置いておきます(イメージするだけでもOK)
グラブをつけてボールの右後ろ(ライン外し)に立ち、腰を落として構えます。グラブははじめから低く下げて正面に向けておきます。
小刻みステップを右足から①❷③❹と交互に行います。○数字は右足、●数字は左足です。
⑤で右足を踏み込んで、捕球姿勢に入っていきます。グラブを低く保ち、右足を踏ん張ってタメを作る意識を持ちます。
❻で左足のかかとをそっとつくと同時に、立てたグラブをぐっと前に出しなが、右手でやわらかくフタをします。
残った体重を左に移動させながら、両手の位置が体の前方のままで握り替え動作をします(両手は体に引きつけません)
握り替えた位置から、両ひじを開くイメージでボールとグラブを左右に離し(割り)、送球のトップを作ります
これを何回も繰り返して、自分の動きにします。普段の生活でも、ついつい左の手のひらが前を向いてしまうくらいやりましょう(笑)
3.3 半身キャッチの練習1
うまい子たちは、左足を後ろに引いて半身で取ることを重要なバリエーションにしています。うまくない子たちはそのイメージが全くありません。これは重要な差です。そこで、左足後ろの半身キャッチが自然なことだと体に覚えさせます。
グラブを持って両足をひらき、腰を落として、右足を前、左足を後ろの半身の捕球体勢をつくります
足を動かさないでよい範囲へ、正面や少し左側のショートバウンドを投げてもらいます
グラブを立てて、バウンド位置へ手のひらを押し出すようにしてキャッチします
3.4 半身キャッチの練習2
グラブを持って足を肩幅くらいにひらき、腰を落として構えます。この後、右足の位置はずっと固定します。
少し離れたところから、体の左側にゴロを転がしてもらいます
①1球目は、左足を左前に踏み出してキャッチします(ボールを返して、足を肩幅に戻す)
②次は、左後ろに踏み出して半身でキャッチします
これを交互に繰り返します
慣れてきたら、少しバウンドのあるゴロも転がしてもらい、必ずショートバウンドで取れるように左足の方向が前なのか後なのか判断してキャッチします。グラブは立てて、下から前です(手のスキル)。
うまい子たちは、ボールを待ってとることを恐れません。もちろん試合の状況や、ゴロの高さ・強さによってはリスクをおかして前に出ることもあります。しかし基本的には良いバウンドで取れることを重視して、半身の姿勢でボールをよく見ておき、そのままの姿勢でキャッチすることも多いのです。闇雲に前に走ったりしません。
ここを重要な気づきにしてほしいと思います。
4. まとめ
今回は、ゴロ捕球のうまい子、うまくない子の比較から、それぞれの特徴を整理してみました。
どうやったら少しでもうまい子に近づけるのか、それには手と足のスキルに分けて考え、それぞれ練習していくことが近道だと思います。
また基礎練習で反復したことを、次にノック練習で必ず実践してみましょう。はじめは違和感がありますが、徐々に慣れていって、その動きがあたりまえだと思えるようになってきます。そしてその時には技術が上がっているのです。
うまい子たちは、小学生のときから正しいやり方を教えてもらい、それを自分の「スキル」にするための練習をコツコツ積み重ねてきてたはずです。今うまいとは言えない子たちは、その知識や練習に出会っていなかっただけ。
今からでも決して遅くはないし、伸びしろのある君たちのほうが成長は早いはず。今の実力差を目の当たりにして心折れてしまわずに、1週間、2週間・・・と努力を積み重ねていったときの自分がレベルアップした未来にワクワクしよう!